私立小学校の六年生への特別授業

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令和五年度も、横浜にある私立小学校で、六年生120人が対象の特別授業を行った。

授業の前の打ち合わせの時、担任の先生から、子供たちにウクライナ戦争のことやイスラエル問題の話も授業でしているし、平和教育の授業で長崎に行ったと聞いた。

それが頭にあったので、授業のまとめのとき、武道における勝ち負けと、武人として平和を求めるとは、どういうことか、私が思うところを話した。

武道において勝った、負けたは、一義的には最も重要な要素である。

勝負の世界で勝ちにこだわるのは当然のことで、ましてや生き死にのかかった場面において、負けるというのは即、死を意味する。

百回やったら百回勝つ、これが武道の第一の目標だし、武道に限らず、国家間の争いしかり、経済界もしかりだろう。

ここまでは世界の常識だが、日本武道の神髄はその先にある。

それは、百回やったら百回勝つ人間になるよう鍛練し、修行を積んだ人間が、勝ち負けという二律背反する相対的な世界を超え、勝敗にこだわらない、絶対的な平穏の世界にたどり着くことだ。

いまの日本に足りないのは、我々の先人たちが培った、このような境地に対する理解と実践だと、私はつくづく思っている。

日本人は高い志しで、百回勝負しても必ず勝てる実力を持つよう準備、鍛練すること、その過程で得る高潔な精神性で、残念ながら相対境で迷いながら、他者に迷惑ばかりかけている人、あるいはその集団を教化すること、

それが世界平和に向かう唯一の道で、武士道精神とは、その道を歩む覚悟を指す。

だから皆さんは、こういった視点で今の世界をみてほしい。

そして、これから自分が社会に出た時も、この視点を忘れないで生きてほしいと話した。

公立学校でこの話をしたら、問題になるのかもしれない。

しかし、この学校では、生徒のみならず先生方にも好評で、この話をしてくれて良かったと、わざわざ伝えに来てくださった先生もいらした。

世間にはいろいろな考え方があるが、世界情勢が逼迫しつつある今日、口先だけで平和を述べて、平和のためには戦う準備が必要だ、という当然のことを避けてばかりいては、日本は滅びる。

戦う準備をすること、そして、その覚悟を決めることが、平和への第一歩であるし、日本がその道を歩めば、世界に良い影響を及ぼすことになるであろう。

子供たちに向き合うことで、期せずして自分の心の奥から素直に言葉が出た氣がした。

子供たちが授業を受けたあとに、感想を書いてくれた。

いくつか紹介したい。

・ご講義ありがとうございます。刀は怖いものと思っていましたが、精神の修行などの良い面もあるのだと実感しました。何より私は真剣を持つ経験ができて、とっても良かったと思いました。

・最初は、怖くないのかな、かっこいいなどと、そういうことしか思っていませんでしたが、授業を通じて、武士道は人生の修行のひとつであり、精神を統一し、不動明王と一体化して斬るということが分かりました。

・日本刀の伝統文化や、私たちに日本刀を持たせてくれて、ありがとうございます。黒澤さんの話を聞いて、日本には銃より優れた日本刀があることに気づきました。

・僕たちに日本の文化の素晴らしさだけでなく、自分との向き合い方などを教えていただきありがとうございました。今後に活かしていきたいと思います。

・今までアニメや動画で見た剣士とは全然違う、本物の空気を感じることができました。

・仮想の話をしていなく、現実味のあることしか言っていなかったので、とても心に刺さりました。私の中で刀は「怖いもの」というイメージがあったけれど、今回お話を聞かせてもらったことで、「日本を平和にするために必要なもの」という大事なものに変わりました。

・刀を持たせていただいた時、江戸時代の金具に心が打たれました。刀を振る時はただただ力で振るのではなく、心をひとつにしていることに驚きました。

・私はこれまで刀に興味はあったものの、自分から刀について調べたことはありませんでした。しかし黒澤さんの授業を聞いて、刀についていろいろ知りたいなと思うことができました。
友達に刀についての話をして、興味を持ってもらえるようにしたいと思います。私も、刀の存在は日本にあるべき文化だと思うので、繋げられるように努力していきたいと思います。

・私は日本史と美術が好きで、刀を観る機会が他の人より多く、そのためじっくりと刀や武士道のお話が聞ける今回の演武を楽しみにしていました。刀は武器の面と宝物の面の二面を持ち、くわえて、置く場所によって意味が変わってくるのが面白いと感じました。私は黒澤さんの「王道を踏み外さないことが大切」という言葉が印象に残っています。これは他分野でも共通することだと感じました。
これからは、王道を踏み外さないが、自分らしくあることを意識して生活していこうと思います。

日本武徳院 殺活自在流剣法

師範・剣士 黒澤龍雲

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