「日向正宗」と武将の美

 In 刀剣, 師範

三井記念美術館で開催中の『国宝の名刀「日向正宗」と武将の美』展をみる。

数は少ないが、美術館所蔵の刀からセレクトした名刀揃いの、内容の濃い展示だった。

目玉は国宝の短刀「名物 日向正宗」で、刀剣乱舞のキャラクターにもなっているようだ。

実物も特徴的な五つの大きな波のような刃文と、心持ち反りはつくものの、すっと背筋が伸びたような棟が際立つ、男らしい姿の凛とした名刀だ。

この刀は石田三成が所持したこともあり、三成は東博所蔵の重文「石田切込正宗」も持っていて、刀剣に関しては目利きであったのであろう。

他にも国宝の貞宗や、重要文化財の則宗、兼光などが展示されており、その中でも一番印象に残ったのが「延寿 国信」の太刀だ。

少し磨り上げてあるものの、身幅広く堂々とした体配に深い樋が入り、地鉄は板目よく詰む。

直刃の素直な刃文に、ところどころ二重刃かかり、刃ぶち良く沸えて、足、葉よく入る。

この刀は国信代表作で、重要文化財に指定されている。

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国信は現存作が少なく、初めて観た。貴重だ。

来の系譜を継ぐので、作風も来に似ると物の本には書いてあるが、鑑定にでたら誰に入札するか大変迷う刀だ。

刀剣乱舞の影響や、日本文化全般に若い世代も興味を持ちはじめているからか、刀の展覧会にも人が入るようになってきた。

いつも思うのは、刀には独特な見方や言葉があり、それを勉強したら、今まで見えなかったものが、霧を払うようにパッと観えるようになり、深い世界が開けるし、それによって、刀を作った人、それを所持した人、今の今まで手入れをして守り伝えてきた人と魂で繋がることができる。

自分は三十年近く刀に関わってきて、今後はそういった魂の繋がりを、微力ながらも後世に伝えるのが仕事なのだと、あらためて思った。

興味のある人は、どうぞ道場に気軽に遊びに来てください。

日本武徳院 

黒澤龍雲

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