炎の錬金術 刀鍛冶見学会に参加して
均等に切りそろえられた炭に、半紙に付けた小さな火種を置く、そこにふいごで風を送る。あっという間に炭に火が移り炎が上がる。
いとも簡単そうに行われる作業。
しかし焚火などで火を起こす時のことを思うと、このような早業で火を起こすことは容易ではありません。
最初の段階から見事に効率化された技と仕組みが見られました。
ふいごから風を絶え間なく送り続けることで、火床は短時間で1000℃を超す高温に熱せられます。
ふいごの体験をさせていただきましたが、それは大きな息を炭に吹き入れるようでとても心地よい感触でした。
高温に熱せられた火床に玉鋼を入れて朱くとろける色になるまで熱し叩き形を整えてゆく、それを熱した延べ棒に接着させる。
高温で熱せられた炭床から取り出された鋼は巨大な線香花火のよう、そして叩かれて高音の金属音と共に火花を散らす。
そして叩き、折り返し、叩き、が繰り返される。
今回見せていただいたのはここまででしたが、刀の形に整形されてゆく様や最後の焼き入れまで見てみたいと思いました。
砂鉄という自然界にある一つの要素を取り出して、炎の力を借りて鍛えることにより、凛として鋭く光輝く美しい姿へと昇華させてしまう。
まるで錬金術のような仕事だと思いました。
そして素材をはじめすべての工程に自然が介在していること、つまり玉鋼に含まれる鉄の成分や炭の品質、季節や天気や気温から、刀匠の体調や精神状態に至るまで、均質ではない自然の揺らぎと共にあるということ。
なのでしっかりマニュアルに沿って作れば必ず上手く作れます、とは言い難いなにかがそこにはあるのでしょう。
一振りの刀を完成させるために高度な技術が必要なことは大前提として、残りの数パーセントの部分では人智を超えた自然との対話や祈り、のようなことが必要なのではないでしょうか。
この度は貴重な機会をいただきありがとうございました。
門下生 日下部泰生